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Azure の特典、コスト最適化などのコスト削減について

今回はAzure で利用可能な各種特典やAzure リソースのコストを最適化する特典について説明します。

Azure の各種割り引きについて

Azure ではオンプレミスからの移行やAzure リソースで様々な特典を利用することで、移行コストやリソースに対してコスト面の割り引きなどを受けることができます。Azure の料金に関する割り引きでは主に以下のようなものがあります。

  • Azure 移行に関する割り引き
  • Azure リソースのコスト最適化
  • 学生、開発者、非営利団体向けの割り引き

Azure 移行に関する割り引き

Azure ではオンプレミスからAzure への移行の際に、条件を満たすことで割り引きを受けることができます。Azure 移行に関する割り引きには以下の内容があります。

  • Azure ハイブリッド特典
  • Azure 移行およびモダン化プログラム
  • FastTrack for Azure

Azure ハイブリッド特典

Azure ハイブリッド特典

Azure ハイブリッド特典はオンプレミスで利用中のWindows Server やSQL Server、Linux サブスクリプションをAzure 上で継続利用することにより、ライセンスのサポートに加えAzure のコスト面で優遇を受けられる特典です。ハイブリッド特典の対象となるのは以下のライセンスとなります。

  • Windows Server のソフトウェアアシュアランス (SA)、サブスクリプションライセンス
  • ソフトウェアアシュアランス対応のSQL Server ライセンス
  • Redhat またはSUSE のサブスクリプション

Windows Server ではハイブリッド特典を適用するためには8 Core 以上のCore ライセンスが必要となります。8 Core 以下のライセンスではハイブリッド特典は利用できません。

ハイブリッド特典では移行先が決まっています。ハイブリッド特典を適用できる主なサービスは以下のとおりです。

  • Windows Server 仮想マシン
  • Linux 仮想マシン (RedHat またはSUSE)
  • SQL Server 仮想マシン
  • SQL Database
  • SQL Server Managed Instance

上記サービス以外にも、Windows Server Datacenter またはソフトウェアアシュアランスを利用しているAzure Kubernetes Service やAzure Stack HCI にもハイブリッド特典を適用することができます。

ハイブリッド特典はAzure リソース作成時または既存VM に適用を行います。仮想マシン作成時では、該当のOS を選択しないとハイブリッド特典の選択肢が表示されないため注意が必要です。オンプレミスからハイブリッド特典を利用した際の概算月額と年額を計算したい場合は、以下のハイブリッド特典計算ツールにて計算できます。

Azure ハイブリッド特典 - ハイブリッド コスト計算ツール

Azure 移行およびモダン化プログラム

Azure 移行およびモダン化プログラム

Azure 移行およびモダン化プログラムは認定されたAzure パートナーから移行の支援を受けることで、技術面のトレーニングやコスト削減などの利点を受けられる特典です。主に以下の特典を受けることができます。

  • テクニカルトレーニング
  • ベストプラクティスのためのリソース
  • 実証済みアプローチによる各段階のサポート
  • 独自のコスト削減オファー

Azure への移行やオンプレミスで稼働しているシステムのモダン化についてはAzure に関するナレッジや人的リソースなどが多くかかります。実績のあるAzure 認定パートナーのエキスパートから移行の計画、実装、運用までサポートを受けられるため、Azure に関するナレッジが社内にない、移行のコストを削減したい、移行後の運用面で不安がある、など移行に関する課題を解消できます。

FastTrack for Azure

FastTrack for Azure

FastTrack for Azure は顧客プロジェクトをFastTrack for Azure に推薦を行い、プログラムの参加が認められた場合にAzure のパートナーから技術支援を受けられるプログラムです。FastTrack は無料で受けられます。FastTrack for Azure を受けるためには、顧客側で以下の条件を満たしている必要があります。

  • 有料のAzure サブスクリプションを持っていること
  • FastTrack for Azure が利用可能なリージョンに配置されていること
  • 12ヶ月以内に毎月5000 ドルのサービス使用量が予測されるプロジェクト

FastTrack for Azure は移行だけではなく、顧客のビジョンや要件、アプリケーションの開発、IoT、AI や機械学習など、様々な分野で支援を受けることができます。ただし、実際のアプリケーションやスクリプトの開発、お客様サブスクリプションへのアクセスなどはFastTrack for Azure の範囲外となるため、あくまでサポートや支援がメインとなります。

FastTrack for Azure はMicrosoft パートナー ネットワークに参加しているISV であれば、自ら推薦を行うこともできます。

Azure リソースのコスト最適化

Azure では長期的にリソースを利用する場合や特定の時間帯のみ利用したいなど、用途に応じたコスト最適化の割り引きがあります。Azure リソースに関するコスト最適化では主に以下の内容があります。

  • 予約
  • コンピューティング用の節約プラン
  • Azure Spot Virtual Machine

予約

予約

予約は特定のリージョンを指定しAzure リソースの特定のサイズを長期的に利用する時に割り引きを得られます。予約はAzure リソースかソフトウェアプランに対して適用することができます。類似した割り引きに後述の節約プランがありますが、リージョンの指定やコンピューティング以外のサービスを対象にできる、割り引き率が高いなどの違いがあります。長期的にAzure リソースの利用が決まっている場合や構築後のサイズや需要が確定した後に利用することで、Azure リソースの料金を削減できます。

Azure リソースで適用可能なサービスは以下となります。

仮想マシン インスタンス

仮想マシンインスタンスに対して割り引きを得られる。OS、ソフトウェアは対象外となる。

Azure BLOB ストレージ

BLOB ストレージおよび Azure Data Lake Gen2 ストレージのストレージ容量が対象となる。

Azure Files

Azure Files のストレージ容量が対象となる。ホット層とクール層の予約は帯域幅やトランザクション率は予約の対象外となる。

Azure Cosmos DB

プロビジョニングされたスループットが予約の対象となる。Cosmos DB のストレージやネットワークにかかる料金は予約の対象外となる。

Azure Data Factory のデータフロー

コンピューティングの種類とコア数の統合ランタイム費用が予約の対象となる。

SQL Database

エラスティックプールと単一データベースのコンピューティング料金が予約の対象となる。SQL のライセンス料金は別途請求となる。

SQL Managed Instance

コンピューティング料金が予約の対象となる。SQL のライセンス料金は別途請求となる。

Azure Synapse Analytics

cDWU の使用が予約の対象となり、Azure Synapse Analytics のストレージ、ネットワーク料金は対象外となる。

Azure Databricks

DBU の使用が予約の対象となる。Databrics のコンピューティング、ストレージ、ネットワーキングなどは別途適用される。

App Service スタンプ料金

スタンプの使用が予約の対象となる。worker は適用されず、スタンプに関連する他のリソースは別途課金対象となる。

Azure Database for MySQL

コンピューティングコストが予約の対象となる。関連するソフトウェア、ネットワーク、ストレージの料金は含まれない。

Azure Database for PostgreSQL

コンピューティングコストが予約の対象となる。関連するソフトウェア、ネットワーク、ストレージの料金は含まれない。

Azure Database for MariaDB

コンピューティングコストが予約の対象となる。関連するソフトウェア、ネットワーク、ストレージの料金は含まれない。

Azure Data Explorer

Azure Data Explorer のマークアップ料金が予約の対象となる。クラスターに関連付けられているコンピューティング、ネットワーク、ストレージに予約は適用されない。

Azure Cache for Redis

コンピューティングコストが予約の対象となる。Redis キャッシュインスタンスに関連付けられるネットワーク、ストレージは予約の対象外となる。

Azure Dedicated Host

Dedicated Host のコンピューティングコストが予約の対象となる。

Azure Disk Storage

P30 サイズ以上のPremium SSD が予約の対象となる。条件を満たさないサイズは予約の対象外となる。

Azure Backup Storage予約容量

Recovery Services コンテナー内のバックアップデータのストレージコストが予約の対象外となる。

ソフトウェアプランでは以下が対象となります。

SUSE Linux

ソフトウェアプランの料金が予約の対象となる。SUSE 測定のみ対象となり、仮想マシンの料金は予約の対象外となります。

Red Hat プラン

ソフトウェアプランの料金が予約の対象となる。RedHat 測定のみ対象となり、仮想マシンの料金は予約の対象外となります。

Azure Red Hat OpenShift - 予約

OpenShift の料金に対して適用される。Azure のインフラストラクチャコストは対象外となる。

予約はAzure Portal、API、PowerShell、Azure CLI から購入ができます。予約購入時に請求方法を選択でき、請求方法は月払いで支払うか前払いで初めに支払うかを選択できます。また、予約は購入後に移し替えや払い戻しを行うこともできます。例えば、予約で利用してるコンピューティングサービスを節約プランに移し替えたりすることもできます。ただし、予約交換については2024年1月1日までに購入した予約のみが対象となります。

予約は購入時にどのスコープに適用するか選択できます。選択できるスコープは以下となります。

  • 特定のリソースグループ
  • 特定のサブスクリプション
  • 共有スコープ
  • 管理グループ

予約は購入するプランによって有効期限や更新に関する通知を行うこともできます。予約の更新漏れなどにより多く料金がかかってしまうのを避けるため、通知の設定を推奨します。

コンピューティング用の節約プラン

コンピューティング用の Azure 節約プラン

コンピューティング用の節約プランは事前に時間単位の固定金額を支払うことで、コンピューティングサービスで最大65% の割り引きを受けられる仕組みです。時間単位のコミットメント額までは割り引きを受けられますが、超えた場合は従量課金の金額が請求されます。コンピューティング用の節約プランで対象となるサービスは以下のとおりです。

  • Azure 仮想マシン
  • Azure App Service
  • Azure Functions Premium プラン
  • Azure Container Instances
  • Azure Dedicated Host

仮想マシンについてはAKS やAVD で利用される仮想マシンも節約プランの対象となります。また、App Service はアップグレードされた Premium v3 プランと、アップグレードされた Isolated v2 プランのみ適用となります。

予約と異なる点は、節約プランは対象のコンピューティングサービス全てが割り引きの対象となります。また、予約の場合はリージョンの指定も必要となりますが、節約プランではリージョンに関係なく割り引きが適用されます。さまざまなコンピューティングのサイズを利用する場合、複数のリージョンを利用する、リージョンを変更する、など動的なワークロードで利用します。

節約プランはサブスクリプション単位の割り当てとなり、以下のスコープで適用できます。全てのサブスクリプションで適用することもできますが、特定のリソースグループや一部のみ節約プランを適用させたい場合にも利用できます。

  • 特定のリソースグループ
  • 特定のサブスクリプション
  • 共有スコープ
  • 管理グループ

節約プランの購入方法はAzure Portal かSavings Plan Order Alias - Create API を利用して購入します。予約と違い、PoserShell、CLI からは購入できません。節約プランは適用期間を1 年または3 年で選択でき、支払いは月ごとの支払いか全て前払いするか選択できます。コミットメント額をどの程度割り当てれば良いかについては、過去30日間の使用量やAzure Advisor の推奨で確認できます。節約プランは既定では自動更新無効となりますが、自動更新を有効にすることで継続利用ができます。節約プランの注意点として、予約と違い一度購入すると取り消し、交換、払い戻しができない点です。そのため、購入時はコミットメント額などを十分に算出の上で購入するようにしましょう。

Azure スポット仮想マシン

Azure Spot Virtual Machines

Azure スポット仮想マシンはAzure の余剰リソースを利用することで、仮想マシンの料金を安く利用できる仕組みです。Azure の余剰リソースを利用するため、Azure 側でリソースが足りなくなると仮想マシンを停止または割り当て解除、削除されます。予約や節約プランと違い、中断が発生するため未使用のコンピューティング容量によっては最大で90%の割り引きを受けることもできます。また、スポット仮想マシンは通常の仮想マシンと違いSLA がありません。そのため、ミッションクリティカルなワークロードや長期的なワークロードには向いていませんが、一時的なバッチ処理や開発、テスト、大規模なコンピューティングなど中断を許容できるワークロードに向いています。

スポット仮想マシンを利用できるのは仮想マシンと仮想マシンスケールセットのみとなり、AKS やAVD で利用される仮想マシンは対象外となります。また、スポット仮想マシンで利用できるサイズ、シリーズは限られており、B シリーズやキャンペーンバージョンはスポット仮想マシンでは利用できません。

仮想マシンでスポットインスタンスを利用する場合、仮想マシンまたは仮想マシンスケールセット作成時に設定します。Azure Portal であれば「Azure Spot 割引で実行する」にチェックを入れ、PowerShell やAzure CLI ではスポットインスタンスのオプションをつけて作成します。通常の仮想マシンからスポットインスタンスへの変更はできません。

スポットインスタンスは容量かコストのいずれかが超過した時、仮想マシンをどうするかについて設定できます。超過時に削除ではなく停止や割り当て解除を設定することで、仮想マシンを停止した状態で維持できます。割り当て解除となった仮想マシンについてはAzure Portal やAzure CLI、PowerShell で再割り当てできますが、Azure 側で容量不足が継続している場合は常に割り当て解除となるため注意が必要です。また、Azure 側の容量次第では仮想マシンが即座に削除されたり複数同時に削除されることもあります。スポットの状態を確認したい場合は仮想マシンの正常性監視やScheduled Events サービスを利用し、削除される30秒前に通知を行うなどの対策が必要です。

スポットで認証を行う場合は、仮想マシン内に認証情報を持つのではなくユーザー割り当てマネージドID など特定のリソースに依存しない認証が推奨されています。システム割り当てマネージドID ではAzure Active Directory から再度トークンを取得しなければ行けないため注意が必要です。

学生、開発者、非営利団体向けの割り引き

Azure では学生や開発者、非営利団体向けの割り引きもあります。

  • Visual Studio 向けの月単位のクレジット
  • Azure for Student
  • 非営利団体向け特典

Visual Studio 向けの月単位のクレジット

Visual Studio サブスクライバー向けの月単位の Azure クレジット

Visual Studio 向けの月単位のクレジットは、Visual Studio サブスクライバーに登録しているとAzure クレジットを毎月受け取れる特典です。受け取れるAzure クレジットは以下のとおりとなります。

Visual Studio Professional、Visual Studio Test Professional

6,000 円

MSDN Platforms

11,500 円

Visual Studio Enterprise

17,000 円

Visual Studio 向けの月単位のクレジットは個人の開発 / テストで利用でき、運用環境のワークロードでは有料のAzure サブスクリプションへのアップグレードが必要となります。Azure クレジットは自動で有効とならず、利用するにはクレジットをアクティブにする必要があります。また、Azure クレジットの利用にはクレジットカードは不要です。

個人の開発 / テストの利用のため、クレジットの上限を超えた場合は従量課金制の価格にアップグレードし上限の削除を行わないとAzure リソースが停止されます。

Azure for Student

Azure for Students

Azure for Student は18歳以上で2年制または4年制の学位授与教育機関の正規の学生がAzure のクレジットの特典を受け取れるものです。学生の間は12ヶ月の間にAzure クレジットが100 ドル利用でき、12ヶ月の間にAzure リソースの無料枠も利用可能となります。料金を超えた場合は従量課金の料金となります。

Azure の無料枠と違いAzure クレジットが少ないですが、アカウントの登録にクレジットカードは不要で学生用のメールアドレスのみで登録できること、学生期間中は更新することで継続してAzure クレジットや無料枠を利用できる点です。学生用の特典とのことで、学生期間中に継続してAzure を利用できる点は非常にお得です。また、Azure for Students のサブスクリプションを卒業後も継続利用したい場合は、Azure 無料アカウントや従量課金制のアカウントにアップグレードすることで、既存のAzure リソースを継続して利用できます。

非営利団体向け特典

Microsoft の非営利団体向けオファー

非営利団体向け特典は特定の利用資格を持った非営利団体がMicrosoft の審査に通過するとAzure のクレジットやMicrosoft 365 Business Premium の利用で優遇を受けられる特典です。非営利団体向け特典では以下の特典を受けられます。

  • 毎年2,000 US ドルのAzure クレジット
  • Microsoft 365 Business Premium を最大10ユーザーまで無料
  • Microsoft 365 Business Basic を最大300 ユーザーまで無料
  • Windows 11 Professional を50 ライセンスまで寄贈される。50 ライセンス以上はCSP から割引価格で購入できる
  • Surface デバイスが8% オフで購入可能

非営利団体向け特典の利用資格は以下の通りとなります。

  • 国で法的な地位を認められている非営利団体や非政府組織
  • 公共の図書館
  • 公共の博物館

注意点は非営利団体向け特典の登録は非営利団体の従業員または非営利の方針に従ったボランティアでなければいけないことです。IT プロバイダーが非営利団体向けオファーを代行で申請することは認められておりません。また、非営利団体向け特典を利用できるのは非営利団体の従業員や非営利の方針に従ったボランティアとなります。それ以外の方は特典を受けることができません。

まとめ

  • Azure ではオンプレミスからの移行、Azure リソースのコスト最適化、学生や開発者などに対し様々な特典がある
  • 割り引きをうまく利用することで、様々な面でAzure のコストを削減できる

参考資料