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Azure の各種料金計算ツールについて

今回はMicrosoft が提供しているAzure リソースや各種特典を利用した際の料金を計算するツールについて説明します。

Azure の各種料金計算ツールについて

Azure には以下の料金計算ツールが提供されています。以下のツールはAzure アカウントを持っていなくてもブラウザから無料で利用できます。

料金計算ツール

料金計算ツールはAzure リソースを組み合わせた際の推定料金を計算するツールです。料金計算ツールでは製品使用前にかかる前払いコストと月額料金の2種類を計算できます。

以下画像は料金計算ツールのリソースを選択する画面となります。

Azure のリソースでは、リージョン、製品タイプ、レベル、通信量などそのサービスで利用する内容を入力します。また、予約やサポートプラン、ライセンスプログラムといった各種割引を利用する場合の料金についても計算できます。また、料金計算ツールでは、個別でリソースを組み合わせる以外に特定のシナリオ例の構成を出すこともできます。

料金計算ツールの計算結果は以下の通貨単位で表示できます。

  • 米国 - ドル
  • イギリス - ポンド
  • インド - ルピー
  • オーストラリア - ドル
  • カナダ - ドル
  • スイス - フラン
  • スウェーデン - クローナ
  • デンマーク - クローネ
  • ニュージーランド - ドル
  • ノルウェー - クローネ
  • ブラジル - Real
  • ユーロゾーン - ユーロ
  • ロシア - ルーブル
  • 台湾 - ドル
  • 日本 - 円
  • 韓国 - ウォン

計算結果の価格は米ドルで計算されるため、その時のレートによって金額が変わる可能性があるため注意が必要です。また、料金計算ツールは推定料金となるため、正確な価格見積がほしい場合にはAzure の営業担当への見積要求が必要となります。

以下画像は計算結果を日本円で表示した画面となります。

作成した見積もりはMicrosoft アカウントにログインしていれば見積もりを保存できます。基本的な構成やよく利用する構成をの見積もりを保存しておくことで、類似するケースでの見積作成を効率的に行うことができます。保存以外にもURL による見積もりの共有も可能であり、URL を共有することで他のメンバーや顧客におおよその金額を伝えることもできます。URL を開いた場合は料金計算ツールでリソースの設定された画面が表示されます。更に作成した見積もりはExcel ファイルでダウンロードできるため、見積もりをファイルで欲しい場合に利用できます。ただし、PDF ファイルでは出力されないため、PDF ファイルが欲しい場合は別途変換を行う必要があります。

総保有コスト (TCO) 計算ツール

総保有コスト (TCO) 計算ツールは、オンプレミスで稼働しているサーバー、データベース、ストレージ、ネットワークをAzure に移行することでどの程度コストを削減できるか評価するツールです。評価方法は、ブラウザの入力項目を手動で入力する方法と指定フォーマットのExcel ファイルを使う一括評価があります。少数であればブラウザから入力する方法でも良いですが、オンプレミスのリソースが多い場合はExcel ファイルの一括評価を利用すると良いです。

評価は以下の項目がグラフ形式で表示されます。グラフの内容についてはレポート期間やリージョン、ライセンスプログラムを指定することでより詳細な評価を行うことができます。

  • 時間経過に伴うコストの推移
  • 期間におけるオンプレミスとAzure の合計コスト
  • オンプレミスとAzure の各コストの内訳
  • コストの内容概要

ちなみに、総保有コスト計算ツールでオンプレミスのコストよりAzure のコストが上回ると「お客様の入力に基づくと、このインスタンスではコスト削減が実現されないようです。」と表示されます。

評価結果はPDF ファイルでダウンロードでき、URL で共有も可能です。また、Microsoft アカウントでログインすることで一度作成した評価をアカウントに紐付ける形で保存することができます。保存した評価は上書きして保存したり、別途名前をつけて別の保存もできるため、基本的なワークロードを作成して使い回すこともできます。

総保有コスト (TCO) 計算ツールで評価するリソースは以下の項目となります。また、評価する項目によって移行するサービスが固定されています。

サーバー

Windows/Linux サーバーとWeb App を選択できる。Windows/Linux サーバーを選択すると仮想マシン、Web App を選択するとApp Service で評価される。サーバーは入力必須項目のため、サーバーは必須項目のため入力しないとエラーになる。

データベース

データベースはSQL Server とMySQL、PostgreSQL、SQL Server ASP、Oracle Exadata を選択できる。SQL Server はSQL Database、SQL Database Managed Instance、SQL Server VM を選択できます。MySQL はAzure Database for MySQL、PostgreSQL はAzure Database for PostgreSQL、SQL Server ASP とOracle Exadata はAzure Synapse Analytics で評価される。データベースは任意項目となる。

ストレージ

ストレージはローカルディスク/SAN とNAS/ファイル共有、BLOB を選択できる。ローカルディスク/SAN を選択するとページBLOB、NAS/ファイル共有を選択するとAzure Files、BLOB だとブロックBLOB で評価される。ストレージは必須項目のため入力しないとエラーになる。

ネットワーク

オンプレミス環境のネットワーク帯域幅と宛先リージョンを入力する。ネットワーク帯域幅は1 - 2000000 のGB 単位となる。

以下画像はサーバーのワークロード入力画面となります。

オンプレミスのリソース選択後、以下項目の入力を行います。他にハードウェアやソフトウェア、データセンターコストなどのその他前提条件をオプションとして入力できます。

  • ソフトウェアアシュアランス (ハイブリッド特典)
  • geo 冗長ストレージ (GRS)
  • 仮想マシンのコスト
  • 電力コスト
  • ストレージコスト
  • IT 人材コスト

以下画像の例は電力コスト、ストレージコスト、IT 人材コストの入力画面となります。

総保有コスト計算ツールは移行先のサービスが決まっているため、現在のオンプレミスの構成のままAzure リソースへ移行したい場合など単純な移行であればコスト削減額を提示するには良いツールです。逆に現在のオンプレミスの構成からアーキテクチャを変えたい場合や評価で選択されないサービスを利用したい場合には、移行後の構成に加え料金計算ツールを使ってコストを算出するのが良いです。

ハイブリッド特典節約額計算ツール

ハイブリッド特典とは、オンプレミスで利用中のWindows Server やSQL Server の既存ライセンス、Linux のサブスクリプションをAzure 上で利用することで、仮想マシンを低コストで利用したりオンプレミスとの同時使用ができるデュアル使用権などを受けられる特典です。ハイブリッド特典を利用することで、オンプレミスからAzure への移行を様々な面で行いやすくなります。

ハイブリッド特典節約額計算ツールは、現在利用しているライセンスのコア数やライセンスの種類、移行先の仮想マシンやレベルなどを入力することで、以下の概算コストを計算することができるツールです。

  • ハイブリッド特典を利用しなかった場合の1ヶ月あたりの月額概算コスト
  • ハイブリッド特典を利用した場合の1ヶ月あたりの月額概算コスト
  • 対象となる仮想マシン全体での 1 か月あたりの節約額
  • ハイブリッド特典を利用した際にAzure の仮想マシンで1年間に節約できる年額概算コスト

ハイブリッド特典節約額計算ツールで対象となるAzure リソースは以下となります。

  • Windows Server VM
  • SQL Server VM
  • Azure SQL Managed Instance
  • Azure SQL Database

各項目を入力し計算を行うと、以下画像のように金額が表示されます。

ハイブリッド特典節約額計算ツールは、あくまでハイブリッド特典を利用した際の概算コストを計算するツールのため、他のリソースについて計算を行いたい場合は、料金計算ツールなどを組み合わせて利用します。また、料金計算ツールや総保有コスト計算ツールのように計算結果をMicrosoft アカウントに保存したりダウンロードすることはできません。そのため、ハイブリッド特典を利用した際にどの程度コスト削減ができるかを計算する程度に利用しましょう。

まとめ

  • 料金計算ツールはAzure リソースの見積もりを計算するツール
  • TCO 計算ツールはオンプレミスからAzure へ移行した際に削減されるコストを計算するツール
  • ハイブリッドコスト計算ツールはハイブリッド特典を利用した際の金額を計算するツール

参考資料